経営に役立つISOシリーズ 126号 攻めのISO各現場の管理に生かす-2014.1.10 根橋弘行 建設業A社は、ISO9001の認証取得以来、2回目の更新審査を迎えました。社長がインタビューを受けています。審査員: 2回目の更新審査となりますが、ISOの浸透具合はどうですか? 社 長: かなり浸透してきていると思います。当社は公共工事のウェイトが高いので、ISOの認証をしっかり維持しなければなりません。そのことを口酸っぱく言っているので、社員は意識しているのだと思います。 審査員: それは良かったです。逆に課題は何ですか? 社 長: 公共工事の入札ではISOの認証を受けているということで一定の評価を受けますが、現場の管理ではISOはあまり貢献できていません。 審査員: ISOの導入前と導入後では、公共工事の工事成績に変化はありますか?社 長: あまり変わらないですね。 審査員: なるほど、現場管理にはISOは活用できていないようですね。 社 長: そうなのです。 審査員: 工事部の品質目標はどのようなテーマを設定していますか?社 長: 「工事成績80点以上の達成」です。ご存知のように工事成績で高得点を取ると、次の入札時に有利になるからです。公共工事の入札では、総合評価式で決まる案件が多いですが、各社横並びの状況で差が出せるのは前回工事の工事成績で高得点を取ったという実績です。工事を折角やっても工事成績が低ければ、次回入札ではまったく意味がありません。 審査員: それならば、工事成績で高得点を取らなければなりませんね。工事成績を高めるためにどんなことに取り組んでいますか? 社 長: 現場代理人に責任を持って工事管理をしてもらっています。 審査員: 現場代理人がうまく管理できているかを会社で管理する仕組みはあるのでしょうか? 社 長: 現場代理人が何か相談したいことがあれば電話やメールで連絡してきますが、それ以外は特にありません。現場に入ったら会社へ出てくることもあまりありませんから。 審査員: その辺りにISOを使ってうまく管理する余地があるのではないでしょうか? 社 長: どういうことでしょうか? 審査員: 品質マニュアルの監視・測定の項目をみると、教育訓練の進行状況や是正処置の進行状況などが規定されています。確かにこれらは大切なことですが、御社で大切な「工事成績80点以上達成」のために管理すべき項目が明確になっていません。 社 長: そうですね。 審査員: 「工事成績80点以上達成」のためには、どのような項目を管理すればよいですか? 社 長: 例えば、竣工検査でアピールできる創意工夫の件数や工程進捗状況などですね。 審査員: それをどのように管理したら良いでしょう。 社 長: 従来から月報の仕組みがあり、各現場の状況は代理人が月報で報告しています。それから、工事部長が現場の規模などを考慮して安全パトロールを計画して実行しています。ISOのために特別なチェックの仕組みを作らずに、これらの仕組みを生かしていければよいと思います。 審査員: そうですね。月報で定期的な報告が行われ、工事部長の安全パトロールの時には、計画通りいかないときの対策検討ができればよいと思います。是非、ISOを生かして現場管理を進めていきましょう。そうすることで、現場代理人任せのやり方から会社としてのマネジメントにレベルアップできます。 社 長: 分かりました。取り組んでいきます。 建設会社が公共工事の受注力を高める一番の近道は工事成績を高めることです。個人任せから、ISOを活用した現場管理に転換していきましょう。 以上
|