No.616 ≪炭薪奉行に学ぶコスト感覚≫-2010.6.30 |
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2010/06/30 Wednesday 09:57:11 JST | |
No.616 ≪炭薪奉行に学ぶコスト感覚≫-2010.6.30
吉川英二氏の名著「新書太閤記」に木下藤吉郎時代の豊臣秀吉が織田信長の部下として力量を発揮した仕事の中に「炭薪奉行」という逸話がある。 武士たちは木下藤吉郎が見回りに来ると、あわてて火鉢の炭火に灰をかぶせて、倹約ぶりをPRした。木下藤吉郎はそんな武士たちに、「冬は寒いもの。もっと、炭をくべて、部屋を温かくしなされ。炭薪はほしい分だけ、倉庫から取ってくれば良い」と積極的に使用を勧めた。びっくりしたのは武士の方で、智恵者の木下藤吉郎のことだから、何を考えているかわからない。警戒すべしと逆に使用を押さえたほどだった。しかし、木下藤吉郎には考えがあった。武士が戦のない冬場に火鉢の周りでお茶をのんで無駄話をしているのは、トップである織田信長の温情に原因がある。一旦、戦が始まれば、信長に命を差し出さねばならない武士たちに、せめて、戦のない冬場ぐらいは楽をさせてやろうという温情である。 しかし、天下統一を目指す、信長軍にとって、体を鍛えることは大事な仕事の一環である。体を鍛えれば、体は温かくなるので、座敷にこもって火鉢を抱いて無為な時間を過ごすこともない。そこで、信長に具申した。「トップ自ら、冬場の訓練を行っていただきたい」。炭薪の節約のためとは一言も言っていない。戦のない冬場こそ、本格的な訓練のできる最高の時だから、トップが先頭に立って率先垂範することは、天下国家のためである、かわいい部下の命を大切にする事になると訴えたのである。 信長が木下藤吉郎の具申を受け入れて実行したところ、炭薪の使用料は1/3に激減し、結果的に尾張国財政の立て直しにも大いに貢献したのである。 コストは目先の直接的なものだけを意識するのではなく、なぜコストが減らないかを考えて、その本質を極める。 |
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最終更新日 ( 2011/09/29 Thursday 11:42:36 JST ) |