83号-内部監査のやり方を進化させましょう-
3回目の更新審査を迎えた製造業A社の審査風景です。審査員は各部門への審査を実施し、最後に管理責任者へのインタビューに入りました。 審 査 員: 管理責任者様のリーダーシップの下、各部門がマニュアルで決めたことを確実に実施されている事が確認できました。1回目の更新審査の結論としては、全社的にしっかり取り組んでいると評価します。 管理責任者: ありがとうございます。 審 査 員: 今後は、継続的改善を確実に進めていって頂きたいと思います。 管理責任者: 私もそう思います。決めた事を実施するという事はある程度の慣れで進めていく事ができると思うのですが・・・・。改善を進めるというのは難しいですね。 審 査 員: 皆様は、内部監査を年2回実施しています。その監査によって、決められた記録を確実に実施するなどの事が推進出来ているのだと思います。 決めた事を実施する事が出来るようになったのだから次は「改善」に焦点を当てた監査へ移行していく事がポイントですね。 管理責任者: 監査のやり方を変えるという事ですか? 審 査 員: そうです。内部監査の計画書を見せて頂くと、規格の項目を逐一確認する方法をとっておられますね。 これは「規格要求事項監査」という方法で、規格要求事項に適合している事を漏れなくチェックできる事と、チェックリストを最初に決めておけば、誰でも同じ水準で監査ができる、という特徴があります。 管理責任者: そうです。外部のセミナーで教えてもらったこのやり方でやっています。 審 査 員: しかし、「規格要求事項監査」は、業務の内容については話し合われない、被監査者が気づいていない問題を発見できない、という弱点があります。監査には色々のやり方があるので研究してみて下さい。 管理責任者: 監査のやり方は決まっていると思っていましたが、そうではないという事に気づきました。研究してみます。 ISO運用期間が長い企業では、監査がマンネリになっている例が多く見られます。 それらの企業では、「内部監査というのはこんなもの」であるとか、「内部監査のやり方はセミナーで教えてもらった方法しかない」という誤解があるようです。 今回は企業の状況によって内部監査のやり方を変えていく事を検討します。 ご提案:ISO運用のレベルや企業の特性によって内部監査のやり方を変えましょう 内部監査の目的の設定や実施のやり方は企業の状況によって変えていかなくては効果のある内部監査にはなりません。 自社の現状を確認し下記の様な方法で内部監査の改善を検討しましょう。 業務別監査 目的:業務手順の適合性を確認する。 方法:業務フロー、QC工程図に基づき監査を進める。 業務フローやQC工程図がチェックリスト代わりに実施する。 長所:業務手順が明確か、決められた通り実施されているか監査できる。 短所:業務の結果についての確認までは及ばない場合がある。 マニュアル化を要求する結果になることがあり注意が必要。
プロセスアプローチ監査 目的:重要な業務の達成度を監査する。 方法:各業務の目標や基準の達成状況を監査する。 そしてその原因を調べ、手順、人的資源、設備、インプットなどの改善点を調べる。 複数の部門が関わる場合には、関係する部門が集まって監査を行う。 長所:各業務の改善のヒントが発見できる。 短所:監査員のレベルアップが不可欠である。 複数の部門が参加する時間をとらないといけない場合がある。
まとめ 規格要求事項への不適合はあまり発生していない状況ならば次のステップに進むべきです。 そのためには内部監査の教育・訓練を継続的に行う事が必要です。内部監査員の勉強は一度きりに終わらず、計画的に進めましょう。 以上 5月 経営に役立つISOシリーズ 83号.pdf
根橋 弘行 |