2010.04~羅針盤を利用し、スタッフに自覚を持たせましょう!!
A歯科医院(院長と4名のスタッフ)のH院長は激変する環境変化に対応するには、これからは一人ではなく、チームとして医院を運営して行かなければ成り立たない、と感じていました。しかし、これまで一人で院の運営を切り盛りしてきたH院長は「どうしたらスタッフを巻き込みながら運営していけるのか」は経験がない為、知人であるコンサルタントのK氏に相談してみることにしました。
H院長: 「Kさん、今日は忙しいところ来て頂きありがとうございます。早速ですが、電話で先にお伝えしました様に、私ひとりでこの医院を切り盛りしてきたこれまでのやり方を変えて、スタッフ全員を巻き込みたいと考えているんです。」 コンサルタントK氏(以下K氏): 「それはいい事ですね。是非お勧めします。それで具体的にはどの様な運営をお考えですか?」 H院長: 「そうですね、これからはチームで運営をしていこうと考えているので、スタッフの一人一人にチームで運営する、という自覚や意識を持ってもらいたいと思っています。」 K 氏: 「とてもいい事だと思います。これからチームとして運営に取り組んで行く、とのことですが、スタッフの皆さんは今の院の現状をどこまで知っていますか?」 H院長: 「といいますと?」 K 氏: 「例えば、売上高、歯科医院でいえば医業収入にあたりますが、これはご存知ですか?」 H院長: 「そういわれると・・・、なんとも言えませんね。受付の人はその辺は知っていると思いますが、衛生士や歯科助手は知らないかもしれません。」 K 氏: 「そうですか、分かりました。では、お聞きしたいのですが、他に先生が重要と思われている経営に関する項目(指標)はどのようなものですか? またそれをスタッフに伝えていますか?」 H院長: 「重要な項目ですね。そうですね。まずは医業収入、それと患者様の数とその中の新規の患者様の数、キャンセル率、あと医業収入における自費診療の割合などです。スタッフへは口頭で、気になったときなどに伝えています。」 K 氏: 「有難うございます、スタッフへは伝えてはいるのですね。H院長、実際にスタッフがどれだけ現状をしっているか直接、聞いてみたいのですが宜しいでしょうか?」 H院長: 「ええ、どうぞ、結構ですよ。スタッフは向こうにいますので、是非、聞いてみてください。 K 氏: 「それでは少しお待ちいただけますか?」 K氏はスタッフの所へ行き、どれだけ現状を知っているかを確認し、H院長のもとへ戻って着ました。 H院長: 「いかがでした?」 K 氏: 「残念ながら、あまり把握はしていないようです。なんとなくは分かるようですが・・」 H院長: 「そうですか、伝えているつもりなんですけどね・・・」 K 氏: 「そうですね。院長は口頭で伝えてるはずなのですけどね。 分かりました、H院長。これは私からの提案なのですが、まずはこの院の全スタッフに、院の現状を知ってもらう事から始めませんか?現状が分からなければ、これからの医院に関してお互い話しあう事もできませんし、その先にある目標設定や問題解決などへは進めないですから。今は院長が考えているのと同じ事をスタッフ全員に理解させるコミュニケーションをとる事が優先だと私は思います」 H院長: 「そうですね。スタッフが把握していなかったのは少しショックでした。逆にこれからの課題だと、前向きに考えます。Kさん、やってみます。宜しく御願いします。」 K 氏: 「それでは現状を把握できるような“羅針盤※1”を作り、それを定期的に皆で確認していく事にし、理解を深めていきましょう。」 ※1羅針盤:トップの意思決定、経営判断、経営指示を早く実行するためのもの。羅針盤をみればトップは業績の推移、問題点、打つべき手が一目で分かるもの、極力一覧で、またグラフなど単純な表を使用し、業績の傾向が的確に把握できるもの、年間を通して継続して活用できるものが望ましい。 H院長はK氏の提案を元に早速、羅針盤を作り、毎月スタッフと確認する事に取組み始めました。数ヶ月すると、これまではなんとなくしか院の現状を理解していなかったスタッフでしたが、定期的に羅針盤を確認する事で現状を把握し、院長を含め、院の現状に対するお互いの認識をすりあわせる事が可能になったのです。 全員で現状の認識を行う事を達成したA歯科医院では、その後、意見を交換や話し合いを重ね、具体的な行動を起こすことができました。また、その成果を羅針盤で確認できた事によって、「行動を起こせば成果があがる!」と感じる事ができたスタッフは、一人一人がチームで運営する、という自覚や意識を持ち始めたのです。 具体的行動提案: 「羅針盤を利用し、スタッフに自覚をもたせましょう」 (1)現状を確認する羅針盤を作成する ・A1大の模造紙を使用し、「保険収入、自費収入、レセプト枚数、新規患者数、 キャンセル率、リコール数」の項目を表の縦枠(左側)に書き、横枠(上側)に 1月~12月の時系列で月毎の枠を作成し、一覧で表す。項目と該当する月に、 当月の数値を記入する。業績の傾向が簡単に的確に把握できるものにする (折れ線グラフでもよい) ・当年度のだけではなく、昨年度の数値、目標数値も記入し、比較できるようにする (当年度は黒字、昨年度は赤字、目標は青字など見ただけで分かるような色分けを する) (2)羅針盤を運用する ①表は毎月、前年度の数値と当月の数値をスタッフに記入させ、比較できるように させる。(前年度の数値はまとめて最初に記入してもOK) ②当月の実績を確認する場合は、表を用い、全員の前でスタッフに発表させる (担当制)事で数字を体で覚えてもらう
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