No.331【企業が変わるチャンス】-2004.11.24 |
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2007/01/17 Wednesday 10:46:41 JST |
No.331【企業が変わるチャンス】-2004.11.24
平家物語(作者不詳)の有名な一節に 「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理を顕す」 という一文があります。 世の移り変わりは常に変化しており、相当の努力と工夫をしなければ、いくら栄華権勢を極めている者さえ衰退してゆく。 形あるものは「流行廃り」があるのが正常だという意味です。 企業も全く同じで、右肩上がりの成長を持続する企業も皆無であれば、右肩下がりの衰退ばかりの企業もありません。山があれば谷があります。常に変化することにより成長のチャンスがあるといえます。 「変わる」とことによって成長のチャンスをつかめるということは皆が知っていることですが、のっぴきならないところまで追い込まれないと変われないこともまた事実です。 「窮鼠猫をかむ」ところまで追い詰めないと、変わらないのも悲しいことですが、これが現実であることも否定できません。 企業のライフスタイルにおいて、変わるチャンスがたびたびありますが、そのときにどうすればよいかを考えてゆきましょう。
第一の「変わる」チャンス 企業は常にお客様の変化に対応し、お客様のニーズを満たす「新しい商品」を開発し、お客様満足を実現する「新しいサービス」を提供することによって成長を維持し、業績をあげることが出来ます。 新しい商品やサービスを開発し提供することによって企業は新しいお客様を開拓し、活気が出てきます。 客数×客単価が売上ですが、その両方が伸びてゆく、いわゆる順風満帆のときです。 稼いだキャッシュを次の成長分野に投資するために、今までやっていない事業を開発する時期です。 このときに第一のチャンスがやってきます。 順風満帆に時の「変わるチャンス」は危機感の創造、すなわち、新規事業または新規市場への進出や大型投資が必要です。 しかし、現場からは反発が出てきます。 「まだまだやらねばならないことがいっぱい有るのに、なぜ、今、無理をしてリスクの高い事業をやらないといけないのか」 「マンパワーがダウンしてお客様が減ったらだれが責任を取るのか」 「現場は多忙を極めている。もう少し先でもよいではないか」 利益の源泉を持っているからこそ、思い切って新しいことに投資が出来るのです。 これらの声に耳を傾けて、大局着眼を見誤り、先送りしてしまうと、第一のチャンスを失います。 サントリーがウイスキー事業で大成功を収めていたにもかかわらず、ビール事業に進出し、大変苦労して成功した話が有名です。
第二の「変わる」チャンス 第一の「変わる」チャンスを先送りするという現場の声を尊重し、当面は足元の事業に専念する場合、自社が順風満帆ということは同業他社も多かれ少なかれ同様の状況にあります。 ライバルも黙っていませんから、新しい商品を市場に投入し、市場はさらに活性化します。 市場は活況を呈し、客数は伸びるのですが、激しい競争に勝つため、各社ともお客様を確保しようと、販売促進や宣伝広告、イベントとあの手この手で対応し、お客様の関心を引きます。 その結果、売上は上がるのですが、変動費もそれ以上にあがるため、付加価値が落ちてくるのです。 客数が伸びているので、評判を落とすわけにはいかず社員数は増え気味になります。 固定費が増え、付加価値が下がり、増収減益の兆候が現れます。 このときに変わる第二のチャンスが訪れます。
この段階での改善は、現状を維持しながら、お客様ごとに中身を分析して、付加価値と支払行動を中心に見直しをかけます。 さらに、商品を付加価値と回転率を中心に分析し、ニーズが強く、付加価値の高い商品を欠品させないように管理方法を変更しなければなりません。 販売方法も流通を見直し、エンドユーザーに近づくやり方に変えないと先が見えません。 今までは販売店に依存していた手間のかかるサービスやスピーディな小回りサービスを展開しなければなりません。 「お客様を選ぶなんてできません」 「この商品は当社の大口得意先が定番にしてくれている商品なので、カットすると大口得意先からもカットされてしまう。だれが責任を取るのですか」 「エンドユーザーに直接行くなんて自殺行為です。販売店から総すかんを食って倒産してしまいますよ。それでもかまわないのですね」 トップが不退転の決意で、事実を徹底的に把握し、大局着眼で戦略的思考で望まねばなりません。
第三の「変わる」チャンス 第二のチャンスも先送りしてしまうと、いよいよ切羽詰ってきます。 現場では、依然として「お客様が増えるのが当たり前で、目先は多忙を極めている」ので、感謝の心がなくなり、次第に面倒なことを要求するお客様が邪魔者に見えてくるようになります。 モラール面では安住意識がはびこり、危機感が欠如し、考えることをしなくなる社員が出始めます。 顔では「ありがとうございます」といいながらも、心では「めんどうくさいな、本当に」と思う気持ちが言葉使いや表情、電話応対など現れます。 お客様はとても敏感で、企業の本音を感じ取ったお客様はクレームという形で企業に「慢心が出ているぞ」というサインを送りますが、企業がサインに気づかないと、あきらめて他社に移ってしまいます。一人、また一人とお客様が減ってゆきます。 客数が減り始めるため、あわてた現場は客単価を落としたり、出来もしないような無理なサービスを展開するようになります。 そうすると、減収減益が始まります。 この段階では「もう少しがんばれば、なんとかなる」という甘い見方が圧倒的で、本質的な変化がおきません。 これが変わる第三のチャンスです この症状を放置すると、モラールの低下は著しく、面従腹背的な行動が目立ちます。ベクトルがばらばらになり、一体感が欠如してきます。
この段階で最も大事なことは、全社員を対象に、現状認識をしっかりと行い、減収減益の原因を分析して、問題点を共有することです。 ほとんどの原因は社内にあり、現場の第一線の人々はその解決方法にも気づいているものです。気づいていないのは中堅幹部だけです。 厳しい改善策を打たなければならないのですが、全社員が現状認識を共有していれば、改善は一気に進んでゆきます。 広げた戦線を縮小し、「集中と選択」が必要です。どの事業領域を強化し、どの領域から撤退するのかを選択し、限られたマンパワーとマネーを集中投入する段階に入ります。 固定費の見直し、マンパワーの見直し、諸規定や福利厚生費の見直しまで必要になります。 このステップを経て、この企業は減収増益に改善してゆきます。
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