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2018/02/21 Wednesday 13:23:17 JST

No.1003 ≪「人間が一番恐ろしい」って本当?≫-2018.2.21 目加田博史

 

皆さんは「ミルグラム実験」、別名「アイヒマン・テスト」と呼ばれる実験を聞かれたことがありますか?
1960年代にアメリカのエール大学で、ミルグラム教授が行った実験です。どのような実験かと言いますと、「人は、権威に命じられるとどのような残虐行為も実行するのか」を調べたものです。

新聞広告で集められた20歳~50歳の様々な背景を持つ普通の人に、「これは、罰による学習効果を測定する実験です。教師役のあなたは、生徒役に問題をだし、もし、間違っておれば、罰として電気ショックを与えてください」と告げて、実験するのです。
「教師」と「生徒」は二人1組でペアを組み、別々の部屋に入り、会話はインターホンを通して行われます。「教師」の前には、問題と回答集、電気ショックを与える装置があり、「生徒」が間違えるとスイッチを押すのです。
電気ショック装置の電圧目盛りは15V単位で、最大450Vまであり、装置の下には「危険」と表示されています。白衣を着た博士然としたインストラクターは「いかなる事態に至っても実験は続行してください。すべての責任は私たちが負います。安心してください」と「教師」に伝え、不安感を払しょくさせます。
最初に被験者全員は、あらかじめ45Vの電気ショックを経験し、「生徒」の受ける痛みを理解します。
実験の方法は、「教師」が、問題を読み上げ、「生徒」はそれに回答する。「生徒」が間違うと、電気ショックを与える。「生徒」が一問間違えるごとに15Vづつ強くして行く。

電圧が、75Vを超えると、「生徒」はうめき声をあげ、120Vを超えると大声で叫び、150Vで絶叫し、300Vを超えると実験の中止を要求し、330Vを超えると無反応になりました。「教師」は別室で、「生徒」の声だけを聞いています。

「生徒」の苦痛の声を聞いて、「教師」がひるむと、白衣を着た博士然としたインストラクターが、冷静に、「心配いりません。続けてください」と続行を指示します。電圧が高くなるに従い、「生徒」の苦痛が激しくなると、「教師」は不安になってやめようとしますが、インストラクターに続行を命じられます。さらに電圧を上げてゆくと、「生徒」の苦痛がさらに激しくなります。それでも、続行を命じられます。インストラクターの指示通り、450Vまで電圧を上げる「教師」もいれば、耐えられなくなって実験を放棄する「教師」もいます。

実は、この実験で、「生徒」はすべてサクラで、苦痛の芝居をすることになっていました。教師役と生徒役を分けるくじ引きもすべて「教師」になっており、被験者が必ず「教師」になるようになっていたのです。最初から、電圧は流れておらず、「生徒」の見事な演技の声だけが、インターホンを通じて「教師」に聞こえていたのです。

この実験の結果は、驚くべきものでした。被験者40人中、65%に当る26人が、最大の450Vまでスイッチを入れたのです。135Vを過ぎたころに、実験に疑問を感じ、苦情を訴える「教師」が、白衣を着た博士然としたインストラクターに一切責任を負わせないと説得されると、ほぼ全員が、実験を続行したのです。しかも、他の機関で行われた実験でも、設定の違いによる誤差はあっても、おおよそ、同じ結果になったのです。

この実験から、ミルグラム博士は「人は権威に命じられ、責任を取らなくてよいと保証されると、どんな残虐行為に対しても葛藤やストレスを無視できる」と結論付けました。この実験の発端となったのは、ナチス時代に、親衛隊として、多くのユダヤ人をガス室に送り込んで殲滅したアイヒマンが捕えられ、裁判の過程で、「私は上からの命令に従っただけ」と平然と繰り返したことから、人間は、上からの命令だけで、残虐行為ができるのかどうかを検証するために行われたのです。

ミルグラム実験の結果は、誰もがアイヒマンになる可能性を明確に示したのです。実験に参加した「教師」は、家族が人質にとられているわけでもなく、銃を持った兵士に拘束されているわけでもなく、普通の部屋の中で、インストラクターに命じられるままに、行動していたのです。
アイヒマンは極悪非道で、残虐な怪物のような人間ではなく、単なる凡庸な小役人にすぎなかったのです。

私たちは、この事実を踏まえて、自分の弱さをしり、考えることの大切さを肝に銘じて、権威に盲目的になるのではなく、しっかりとした自分の考えを持たねばならないと痛感します。

 

No.1003「人間が一番恐ろしい」って本当?.pdf

最終更新日 ( 2018/02/27 Tuesday 09:09:30 JST )
 
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